当協会は、1974年に保険医の生活と権利を守るとともに、医療の充実と向上をはかることを目的として設立され、県内の開業医と勤務医の医師・歯科医師約700名が任意で加入し、政治・思想にとらわれない純粋な活動を一貫してすすめております。
協会は設立以来、医療の諸矛盾の根源となっている不合理な診療報酬の抜本的改善の運動を推進しています。
2024年 年頭のご挨拶
明けましておめでとうございます。この言葉を発することがはばかられるほどの巨大災害が日本列島をまたも襲いました。被害の全容はいまだ不明ですが、多くの人命が失われ、連絡の取れない安否不明者も多数に上っています。
昨年7月の豪雨災害を経験したひとりとして、今回の能登地震の被災者が置かれた状況には深く胸が痛みます。亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、被災者の苦難を少しでも減らせるよう秋田県協会としても対策を協議します。これほどの大災害を目の当たりにしながら、膨大な公金をじゃぶじゃぶ、大阪万博、IR・カジノにつぎ込むのはまともな感覚とは言えません。開催を断念し、被災者への援助と地域復興にこそ、資材の投入、財政援助をすべきです。
ウクライナへのロシアの侵攻に加え、ガザ地区へのイスラエルの無差別爆撃など世界に戦争が吹き荒れています。平和憲法を持つ日本が世界に向け、戦争阻止のため、憲法前文にしめされた理念に立って最大限の使命をはたす事が今こそ求められています。『・・われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。・・』医療は戦争とは共存できません。先制攻撃や敵基地攻撃も可能な戦争準備ではなく、戦争させない外交力こそ求められます。
さて、現行保険証を今年秋に廃止しマイナ保険証を導入しようとする岸田政権への不支持率が高騰しています。マイナ保険証の利用率は低下し続け、11月は4.34%まで下がりました。当協会は昨年9月、県に対して現行保険証の廃止は中止するよう要請しました。当日の記者会見は広く報道されました。ちなみに経済同友会幹事の新浪サントリー社長は昨年6月記者会見で「保険証廃止の納期(24年秋)を守れ」とマイナ保険証は財界には至上命題である事を思わず吐露し、政権も今年度補正予算にはマイナ保険証の利用促進・環境整備に887億円を盛り込み、マイナ保険証の利用率が上がった医療機関に対する褒美として公金をバラまく無駄な支出を決めました。今回の能登半島地震では河野デジタル相は、「マイナカードを持ってる方は、スマートフォンから、自身の過去の医療情報を確認でき、避難所でも医師に普段飲んでいる薬や特定診断の情報を共有することもできる」とXに投稿しました。しかし、被災地は停電、携帯電話基地局のバッテリー枯渇、スマホも使えない状態なのです。孤立地区では手作りのSOSが最後の頼りという現状なのに、デジタル庁の認識がいかに現実離れしたものか。呆れます。
保団連はすべての医療機関を守るため、診療報酬の大幅な引き上げを求めてきましたが、2024年の診療報酬改定は本体0.08%の引き上げが閣議決定されました。このようなわずかの引き上げではすべての医療従事者の賃上げ・処遇改善には不十分です。物価高騰、コロナ禍からの地域医療再建に向けて抜本的な引き上げが不可欠です。引き続き、他団体とも共同して運動を継続してゆきます。
「国民には大増税、スポンサー大企業には大まけ減税、自分たちは裏金脱税」これ、許されますか。
本年も会員諸先生の御協力と御指導をあらためてお願い申し上げ年頭の挨拶といたします。
2024年新春
会長 草彅芳明
開業医宣言(全国保険医団体連合会が1989年に決め、1998年に修正した、これからの医療をより良くする決意をあらわすものです)
わが国の開業医は第一線の医療の担い手として、長年にわたり地域住民の医療に貢献してきた。
いま、日本人の平均寿命は大きく延びてきたが、一方、国民生活をとりまく経済、労働、環境などの急激な変化とその歪みは、成人病の増加はもとよりかつては見られなかった心身の疾患をも生み出し、子供から老人に至るまですべての世代を通じて、健康に対する関心と不安が増大している。
こうした中で開業医師、歯科医師のあり方も問い直され、日常の診療に責任を持つことはもとより、疾病の予防から環境の改善に至るまでその専門的知識、技術による幅広い対応がつよく求められている。
同時に近代民主主義の主権在民、人権尊重の思想は、医療における人間関係、医学の進歩と医療の倫理など新しい課題をも提起している。
これらの期待と要望に応えるためには、患者・住民のもとめるところを深く理解し、常に新しい医学・医術を研鑽して、自らの医療生活を省み創造する開業医の姿勢と努力が不可欠である。
また、わが国は「経済大国」といわれながら、その力が国民には還元されず、逆に国民の努力により築き上げてきた社会保障が、軍事予算拡大やいわゆる「民活路線」の陰で次々に後退させられている。さらに現在、地球的規模での環境破壊や核兵器の脅威など、人類の生存すら危ぶまれる状況も存在している。
私たちはこれらの現実に立ち向かいつつ、21世紀の医療を担う開業医像をめざして、次の通り宣言する。
1.全人的医療
私たちは個々の疾患を重視するのみならず、患者の心身の状態、家族、生活環境にも気を配り、全人的医療に努力する。
2.対話の重視
医療は患者と医師の信頼にもとづく共同の行為である。
患者の立場を尊重した対話によって、患者自らが最良の選択を行えるよう、医師は患者に必要な情報や専門的知識、技術を提供する。
3.地域医療
私たちは住民の身近な存在として、日常診療に責任を持つと同時に、地域の保健、予防リハビリテーション、福祉、環境、公害問題等についても積極的な役割を果たす。
4.医療機関等の連携
私たちは最も適切な医療を行うため、診療機能の交流等を通じ他の医師、医療機関等との円滑な連携に努める。同時に他の医療・福祉従事者の役割を重視し、患者を中心とした緊密な協力関係を保つよう努力する。
5.診療の記録
診療の正確な記録は医師の重要な責務である。
療養等に必要な情報の提供に日常的に努めるとともに、患者からの診療情報提供の求めに誠実に応ずる。
診療情報の提供に際しては、医師の守秘義務を遵守し、患者の秘密と人権を守る。
6.生涯研修
私たちは患者、住民が最高の医学的成果を受けられるように常に医学・医術および周辺学術の自主的な研鑽に努め、第一線医療・医学の創造、実践、発展をめざす。
7.自浄努力
私たちは、患者や地域住民の信頼を失うような医療行為を厳に戒める。
また常に他の批判に耐える医療を心がけ、医療内容の自己および相互検討を行うよう努力する。
8.社会保障
医療を資本の利潤追求の市場に委ねてはならず、すべての国民が十分な医療・福祉を受けられるよう、社会保障を充実することは近代国家の責務である。
私たちは国民とともに社会保障を守り、拡充するため努力する。
9.先端技術の監視
科学技術の急速な発達は人類に多くの恩恵をもたらす一方、その用い方如何によっては生態系の破壊なども懸念される。
私たちは特に人類や地球の未来に影響を与えかねない先端技術に対しては、その動向を監視し、発言する。
10.平和の希求
人命を守る医師はいかなる戦争をも容認できない。
私たちは歴史の教訓に学び、憲法の理念を体して平和を脅かす動きに反対し、核戦争の防止と核兵器廃絶が現代に生きる医師の社会的責任であることを確認する。